2013年4月2日火曜日

女の子の設計図 (ひらり、コミックス)




オススメ度:★★★★

ひらりから出た百合短篇集。

同時に出たプロキオンがほのぼのしてる一方こちらはシリアス。


表題作である女の子の設計図はかなり面白いと思った。

両親が離婚し、初め別々に暮らしていた姉妹が一緒に暮らすようになったら姉妹で恋に落ちたという内容だが、その最後の姉妹のやりとりが非常に興味深い

姉が「私、覚悟はできてるんだ。いつか青音ちゃん(妹のこと)に私より好きな人が現れたらその人を選んでね。この恋はいつか終わる、刹那的なものだって知ってるから」
と言ったのに対して

妹は「神様の前で永遠の愛を誓ったってお父さんとお母さんみたいに壊れるときは壊れる。わかりもしない未来のことばっか心配して自分の気持ちを諦めるのなんてやだ」
と答える

それを聞いた姉は「今は心の声に素直でいたい、大事にしたい。刹那的でいい」と思い
妹に「おばあちゃんになってもいっしょにいよ?」と言う

そして最後に「神様天罰は甘んじて受けます」という姉の想いがかかれて終わる


両親の離婚を上手く使ってるように思える。
周囲から承認されている異性同士の父母ですら永遠の愛を誓いつつも別れた

周囲から認められた関係であろうと、永遠を確約しようと意味が無い

だから姉妹という周囲から承認されていない関係だからとか、不確定な未来を言い訳にして実際に今現在抱いている自身の感情をなかったことにすべきではないと言っているのだろう


これがこの短篇集通してのテーマになっているのだと考えられる

女の子の設計図以外の話は

自分の中の「少年」が貴女に恋していると言う先輩

いじめられていた女の子がいじめっ子とずっと一緒、逃がさない、という話

最後が女の子と、その子の兄と結婚したが離婚することになった女性の話


「少年」の話は女の子に一目惚れした先輩が「女の子同士なんておかしい」と思い、だから自身の中の「少年」のせいにしたという話なのだろう

最後の女の子と、その子の兄の嫁の話は、兄と離婚することになって義姉ではなくなるために周囲から認められうる一緒にいる理由が無くなってしまうという話

どちらも周囲から認められる理由をつけて一緒にいようとしたが、最後には自身が一緒にいたい、ただそれだけの理由で二人一緒にいようと素直になる話

いじめ百合も、いじめられていた関係という周囲から承認されないであろう関係ながらも「憎いから一緒にいたい」という想いに素直


このように考えるとこの短篇集面白い。

百合には「女の子同士だよ?」とか「禁断の関係!」とか「一時の熱病」なんていう陳腐なフレーズがあるが、

ある意味それに対してのひとつの解答をだしているのではと考えられる


非常に考えさせられる作品でした

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